交通事故

どんなに気をつけていても交通事故に遭ってしまう場合があります。そんなときに頼りになるのが保険会社ですが、誤解を恐れずいえば、必ずしも保険会社の方が言うことが全て正しいとは限りません。

損害賠償金の支払いは、保険会社基準裁判基準というものがあります。
保険会社基準は裁判基準に比べて低額ですが、その分、保険会社基準を争わなければ早期に賠償金をもらえるというメリットはあります。
他方、裁判基準は保険会社基準に比べ高額であることが一般的です。弁護士が受任した場合、裁判基準で損害を算定し、その支払いを求めることになります。当事務所でも弁護士が間に入っただけで慰謝料が30万円増額になったという事案もありました。その事案は慰謝料額以外の争点は特に無かったので、早期解決となっただけなく、30万円の上乗せに成功しました。
判決になると、事故日から年5%の遅延損害金(利息のようなもの。改正民法施行前の利率)と弁護士費用として損害金の約1割を加算して支払われることになります。もちろん裁判をするわけですから賠償金が支払われる時期は遅くなりますが、年5%の遅延損害金が上乗せされますので、メリットとデメリットを考えながら方針を決定する必要があります。
このように保険会社と交渉するにあたっては、保険会社基準と裁判基準の存在とメリットデメリットを理解しながら対応することが必要になります。

物的損害事件(物損)人身損害事件に分けることが出来ます。

物損の場合の争点の中心は、修理の必要性・金額過失割合です。
大型トラックなどは代車がなかなか用意できませんから、修理するまでの間の営業損失(休車損害)も大きくなります。
保険会社側は独自の計算で修理費用を算出しますが、実際問題として、その金額で修理してくれる業者がいるのか、という大きな壁があります。修理費用を支払ってもらえないから修理することができない、修理することができないから休車損害がどんどん増えていく、ということになりかねないのです。
どのような修理が必要か、その修理にどの程度の費用を要するのかは、自動車修理業者の専門的知見を必要とする場合もあるため、修理業者と協議しながら交渉を進めていくことが必要になる場合もあります。
なお、休車損害については、遊休車がある場合には認められない可能性があります。どのような場合に休車損害が認められるかについてはご相談頂ければと思います。

また、物損については、いわゆる評価損も争いになることがあります。
ただ、評価損は一義的に明確ではなく、修理費用の○%として計算されることもあります。

過失割合
ドライブレコーダーが普及したことで事故態様が客観的に明らかになる場合もあるのですが、そのような客観的資料がない場合、どこで危険を感じたのか、ブレーキを踏んだ地点はどこか、衝突地点はどこか、最終的な停止位置はどこか、車両の衝突痕や接触痕等から、事故態様を推測していくことになります。
当事務所では、弁護士が依頼者様と現場に赴き、上記事情を伺ったうえで、メジャーを使って測量をしたりすることもあります。
実際に取り扱った案件では、「相手方が停止していたところに依頼者車両が追突してきたので自分には過失はない」との主張を受けていた事案で、事故当時の状況や衝突根などを詳細に検討し、また尋問において相手方の主張の矛盾点をさらけ出した結果、本件事故は相手方が追い越し時に急激な車線変更をしたため発生したものであり依頼者側の過失はないという判決を勝ち取ったものがあります。
追突以外の案件では、過失割合が争点になることが多々あるので、事故にあったらまずスマートフォンなどを使って停止位置や接触地点を写真に残しておくことが有効です。
記憶が鮮明なうちにご相談頂ければと思います。

人身損害は複数の損害項目を個別に計算する必要があります。
一般的な項目については次のとおりです。

傷害慰謝料
交通事故日から症状固定日(又は治癒日)までの期間をもとに計算されます。期間が長くなればなるほど慰謝料額は高くなります(ただし、通院が不定期だったり回数が少ない場合には別の計算方法となります。)。 
症状固定というのは、簡単にいえば、通常の治療をしても症状が改善しない状態のことで、医学的判断になります。
治療の効果が出ているのであれば、たとえ保険会社が治療費を打ち切ったとしても、健康保険を使用して通院を続け、実態に即した症状固定日を定めることが重要です。

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって変わります。裁判基準では、次のとおりです。

14級110万円9級690万円4級1670万円
13級180万円8級830万円3級1990万円
12級290万円7級1000万円2級2370万円
11級420万円6級1180万円1級2800万円
10級550万円5級1400万円

 このように等級によって後遺障害慰謝料は大きく異なります。
 頚椎捻挫や腰椎捻挫を受傷し神経症状が残っているという場合、14級なのか12級なのかという争いがよくあります。神経症状を残していることが医学的に証明可能である場合には12級となるのが原則です。しかし、医学的な証明というのはなかなかハードルが高いところで、主治医の詳細な意見書やMRI画像等が必須となります。
当事務所では、いわゆる事前認定で、後遺障害非該当(後遺障害はない)とされていた方が裁判では14級と認定されたり、14級と認定されていた方が裁判では併合11級(2箇所に12級相当と認められた)の判断を勝ち得た事案があります。
また、顔面に醜状痕が残った方について、事前認定で9級と認定された方について、異議申立てを行い、7級相当と判断が変更された事案もあります。
後遺障害等級が変われば後遺障害慰謝料の額が大きく変更となるだけでなく、後に述べる逸失利益の額にも大きく影響を与えます。
後遺障害等級は、治療期間中の治療内容や通院頻度等が判断に影響を与える可能性もありますので、事故に遭われた場合には、保険会社からの示談案が提示される前であっても、早めに相談頂ければと思います。

逸失利益
本件事故がなければ得られたであろう利益のことです。たとえば後遺障害がなければ目一杯働くことができ、そうすればその分の収入も得られるのに、後遺障害が残ったことにより労働が制約され、その制約分の収入を得られなくなってしまったという場合に、損害として認められます。
この逸失利益の計算は、

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間のライプニッツ係数

という式で計算されます。このうち労働能力喪失率は、後遺障害等級によって一定の数値が導かれます。たとえば、14級であれば5%、12級であれば14%、11級であれば20%といった基準が原則です。
ライプニッツ係数を乗じるのは何故かというと、10万円を1年ずつもらい10年間合計100万円より、いまの時点で一括で100万円もらって100万円を10年間運用したほうが利益が大きいという理屈によります。現時点で一括でもらうならその後の運用利益部分は控除する、というものです。
ただ、現在の実務で使用されるライプニッツ係数は、年利5%という数字から導き出されています。マイナス金利のこの時代に5%で運用できる商品などおよそ考えにくいところですから、このライプニッツ係数を使用して導き出された現時点の一括のお金よりも、年々分割してもらったお金のほうが利益が大きい、という事態が発生します。
年々お金をもらう場合を、定期金賠償といったりしますが、現在の実務で、定期金賠償が認められる事案は極めて限られています。
民法が改正され、民法上の法定利率5%が引き下げられることになりましたが、それに伴い、ライプニッツ係数も見直されることになると思われます。
いずれにしても、後遺障害等級が変われば逸失利益の額が大きく変わります。後遺障害等級は異議申し立てや裁判の結果、大きく変更されることもありますから、まずはご相談ください。


素因減額
素因減額とは、既往症など被害者側の心身を原因として損害が拡大したと認められるような場合に、損害の公平な分担の観点から、減額するというものです。疾患にあたらない限り素因減額は認められないというのが原則ではあるのですが、実務的には疾患が存在したことの証明がない場合でも素因減額が認められてしまうケースもあります。素因減額の程度は様々ですが、20%から30%といった事案が多いように思われます。

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